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  逆拘 第6話 
 
  逆拘 6

 

 

 戦任務の専門集団。
 特別工作部隊。
 与えられた目的の為に、手段を選ばない集団だ。
 そこでは、形式的な「中忍」「上忍」などの上限関係は意味を持たない。人間の価値を左右するのは、いくつ手柄をたてたか……だけだ。

 ただ、手柄を立てれば、報償は保証される。
 裏で蠢動する暗部とは対照的に、戦の表舞台で常に特工の名は、誉光を浴びていた。
 だが、そこにそぐわない者の行く末をカカシに知る由も無い。

「カ、カカシ先生……どうするの………?どうやったらイルカ先生を正気に戻せるの……?」
 自分の前に立ち塞がるサクラの肩を優しく押しのけると、カカシは森の外を指し示した。
 その指先から、血が滴る。
「お前達三人……ここから出て行くんだ。里に、戻れ」
 イルカが完全に自分のみに殺意を抱いているのだと判断した故の、指示だ。
 それに、これからここで起こる事を
 この子達に目の当たりにさせるわけには行かなかった。
「どうするの…?」
 再び、サクラの問い。
「………………」
 どうもこうも無い。
「……カカシ先生はどうするのよ……」
 質問に答えないカカシに、サクラは苦無を握ったまま振り返った。
 強い視線をぶつける。
 イルカの手をとり、引き留めようとするナルトや、カカシとイルカの間に塞がるように立つサスケも、カカシの答えを待った。
 覆面の下から荒い息を吐き出して、カカシは瞳に厳しい色を浮かべた。
 その光を、イルカに向ける。
 殺気が、陽炎のように気の放出となって立ち上った。
 下手な策略を練る暇など、皆無だ。

 迷いは、死。

 死ぬつもりは、無い。

「今度は『殺す』ために闘う……」
「っ………」
 ナルトの顔色が変わった。
 尚、強くイルカの袖を引き、叫び声に近い声で懇願する。
「駄目だってばイルカ先生!やめろってばよ!カカシ先生、本気だって!!」
 殺される、と言うナルトの言葉に、イルカは苦笑を一つ、漏らした。
 袖を掴むナルトの手に、いつもそうするように、優しく手を合わせて。
「殺そうと向かってくる敵には同等の報復を与える……当たり前の事だ……」
 ましてや彼は、暗部の人間だったのだから
 そして自分は―
 そう、応えたのだ。
「そういう問題じゃないってば!お願いだから……やめるってばよ……っ!」
 全体重をかけて、ナルトはイルカの手を引く。少し困った顔でそれを見下ろすイルカは、だが軽い仕草でそれを振り払うと、
「悪い。借りるぞ」
 と言って、
「あっ…」
 ナルトの腰に装着してあった苦無を、手にした。
 それはかつて、イルカが使用していたものだと言ってナルトがもらい受けた、
 ナルトがそれ以来、任務には常に携帯してた、その苦無だった。
 皮肉にも、このような形で持ち主の手に戻ったのである。
「………」
 同じ時、カカシも腰から残りの苦無を手にする。
「………っ」
 サクラの表情が、変わった。
 そのとき、二人の間に立っていたサスケが突然、口を怒鳴る形に開いた。
「おいドベ!サクラ!」
「え…っ」
 大きな瞳を更に見開いて、サクラが肩を震わせる。
 ナルトはすかさず「ドベ言うなッ!」と面をひん剥いてイルカの腕を掴んだまま怒鳴り返す。
「ち…」と静かに舌打ちしてサスケは、大股でナルトとイルカの元に歩み寄ると、ナルトの腕を引っ掴んで無理矢理イルカから引き剥がした。
 そして次に、暴れるナルトを引きずって唖然とするサクラの前にやってくると、もう片方の手でサクラの手首を掴んだ。
 サクラの背後で背中を丸めて立つカカシが様子を見つめる前で、サスケは冷たく、稟とした声調で言った。
「俺達は里に戻るぞ」
「な…」
 苦無を握ったままのサクラが一瞬、体を強ばらせた。
 サスケの腕に引きずられたままのナルトは、手足をバタかせながら「何言ってんだってばよ!」と叫ぶ。
 思考が停止してしまったかの様に体を緊張させて立ち尽くすサクラに、真っ直ぐ瞳をつきあわせて、サスケは稟言した。
「俺達は、『俺達に出来る事』をするんだろ?」
「………」
 言葉をなくすサクラの後ろで、カカシはただ無言でサスケの次の言葉を待っていた。
「……………うん…」
 しばしの無言の後、サクラの口端が引き締まる。
 三度サスケに頷く。
 噛みつく程に怒鳴り返そうと口を開きかけたナルトも、
「………………わ、分かったってばよ……」
 暴れるのを止め、サスケに頷き返した。
 三人が三様に納得したのを互いに納得したのを確認する。
「……じゃあ…私達は、行くからね……」
 サクラがカカシを振り返る。
 手にしていた苦無を、手渡した。
 腹を押さえたまま、覆面越しに荒い息づかいをするカカシは、苦無を受け取り右目を細めて微笑む。
「気をつけろよ」
 三人の子供の向こうで、イルカが苦無を握って直立不動の姿が見えた。
 一度イルカを振り返り、サクラは静かにカカシに告げる。
「死なないでね……カカシ先生…」
「行くぞ」
 そして三人は、一斉にカカシに背を向けると来た道に向かって走り出す。
「死なないでよ!…イルカ先生っ!!」
 最後に、そう叫んで。
 間をあけて向かい合う二人の姿が、風のように遠ざかる。
「絶対、何か企んでるだろお前ら…」
 と呟くカカシの言葉など、聞こえる筈もない。
 逆にカカシとイルカの視界から、三人の姿が茂みに飲み込まれるようにして消えていった。
 急に静かになった空気の中、カカシはイルカに向き直った。
 イルカ「先生」には向けた事のない、厳しい視線を向ける。
 それを受け、イルカの表情も変わった。
 人の良い相貌に似つかわしくないと思っていたその殺気付いた瞳……。
「…………俺は本気ですよ……」
 そう呟いて、カカシは片手に二本の苦無を握ると、血で塗れた指先で覆面を引き剥がした。
 血で塗れた口元が露わになる。
 黒い覆面も、血液で更に色濃く濡れていた。
 子供達には、見せたくなかった。
 おもむろに上着の内側に手を伸ばして、薬丸を取り出した。それを口に放り込んで乱暴に噛み潰した。
 強い麻薬を含む、鎮痛薬だった。
 任務で致命傷を負った忍が使命を完遂する為の、「切り札」だった。
 この薬と自爆薬の両方を、中忍以上の忍びは常備していた。
 即効性で、痛みが引いていく。
 くないを両の手に、握り直した。

 不知火の森を抜け、木の葉の国境へと続く「暁の森」の森。
 木の葉へと続く二つの路の内、西の帰路を駆け抜ける、ナルトとサクラの姿があった。
 暁の森の手前で東路を行くサスケと別れ、大分走ってきた。
 幾分、体力的に劣るサクラの息が上がり始める。
「…大丈夫…?」
 足を遅めてナルトが振り返った。
「いいから…っ…先…に走りなさいよ…っ」
 悔しさと苦しさで眉間を歪ませるサクラ。
 ついには大樹の根本で足を止めると、幹に手をついた。放っておける筈もなく、ナルトも駆け寄る。
 そのナルトに、サクラの叱咤が飛ぶ。
「何やってるのよ!いいから行きなさいって!!助けを呼ばなきゃ……」
 下唇を噛んで寸時、戸惑いを見せるナルトに、切れ切れの息でサクラが続ける。
「先生達……死んじゃう……でしょ……」
 声調が涙で揺れるのは、苦しさか、悔しさの為か…。
 ナルトは更に唇をきつく噛んで、サクラに背を向けて駆けだした。
 だが、
「うわっ…」
 一歩も進まない内に、全身が何かにぶつかった。
「な、何……」
 そのまま尻餅をつくほどに跳ね返されて、ナルトは地面に手をついたまま上を仰いだ。
 サクラも、俯いていた顔を上げる。
 しなやかに細い、影がのびていた。
 そこに、くの一独特の微かな香を漂わせる、黒髪の影がある。
「何やってるの、あんた達……?」
 粗野な言い草だが、耳によく通る声が降る。
「…夕日先生………」
 野性味を残した美しいくの一の名が、サクラの口から零れ出す。

 

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2006.07.08.Sat/17:11
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> 昔は、ゲームやマンガの二次創作をしておりました。現在は主にオリジナルネット小説を執筆しています。 得意は「シリアス」「アクション」「サスペンス」です。

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