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  封印:サンプルP3 
「イルカ」
「?」
 呼びとめられて、イルカは足を止めた。 アカデミーでの仕事を終え、受付業務を行うために管理事務所に訪れた時だった。
「三代目」
 両手に巻物を抱えた三代目火影の姿があった。
「持ちますよ」とイルカはかけより、巻物の束を受け取る。 共に受付へと向かう道すがら、並んで歩く。
 イルカは、昨晩ナルトと交わした会話について、火影に報告する。 いつまで経っても子離れできない親みたいで・・・と照れ笑いしながらも、嬉しそうに話すイルカに、火影はいつもの調子で「うむ」と相槌を打つだけ。
 目を細めて、いかにも平和そうな笑顔で話を続けるイルカの横顔を一瞥して、火影は口に加えていた煙管の煙をくゆらせた。
「イルカよ・・・」
「・・・はい?」
 イルカの会話が一段落途切れたところで、火影は独言のような言葉をはさんだ。
 少し高いところから、イルカの視線が火影と向き合う。
 火影は正面を向いたまま。
 廊下に、他に人影はない。
 アカデミーと隣接しているとはいえ、とうに下校時間を過ぎたこの時間、外から子供の喧騒も聞こえてこない。
 赤く染まり始めた太陽が、窓から差しこんでイルカと火影の姿を染めていた。 時間が止まったような、妙な空間の中に、一瞬の静寂。
「一週間後に、森羅武会が木の葉で開催される事となった」
「そうですか」
 再び、イルカは目を細める。
「もうそんな季節なんですね」
「忙しくなるなぁ・・」と言葉を続けて、イルカは笑った。
 五年前、まだ新米教師だったイルカは、大会の準備、運営の手伝いに走り回って働いた事を思いだした。
「今年はナルトも卒業した事ですし、多少手も空いたので、また精一杯お手伝いしますよ」
「子離れできていない」と自分で言った事を棚に上げている事にイルカは気づいていないが。
「・・・」
「・・・・三代目?」
 黙りこんで小さくため息をつく火影の様子に、不安を感じたような目で言葉を止める。
「今年は・・・」
 火影が低く言葉をつむぐ。
 煙管の煙がたゆたう。
 イルカの目に映る火影の横顔。
 笠に隠れて、その表情はよく確認できない。
「・・・・?」
 火影の足が止まる。
 不思議に思いながらも、イルカはそれに倣って足を止める。 廊下の真中に長く伸びる、二人の影。再び訪れる静寂。
 改まった様子の火影に、イルカの心臓が一つ、大きく鼓動した。
 そんな中に低く響く、
「今年は、」
 絶対的な火影の言葉。
「お前にも出場してもらう」
「・・・・・」
 事態を完全に飲み込めていないイルカが、目を見開いて立ち尽くす。
その返事を待たず、火影は再び歩き出した。
「あ、ちょっ・・・三代目・・・」
 あわててイルカはその後を追う。
「ちょっと待って下さい三代目・・。仮にも里の威信をかけた大会ですよ?」
「それがどうした」
 両手に抱えた巻物を落としそうになりながら後をついてくるイルカにかまわず、火影は相変わらず正面を見据えたまま、淡々とした口調。
「厳粛な里内での選抜を経る必要があるんじゃないですか?それをその・・・一介の中忍教師にそう簡単に・・・・」
「なんじゃ。ワシの決定が厳粛ではないと言いたいのか?」
「え、あ、いや、そういう事ではなくて・・・すみません・・・でも・・・これは上忍昇格試験も兼ねている大会なわけですから、私の代わりにもっと他に有望な方を・・・」
 再び、火影の足が止まる。
 不意をつかれてイルカも足を止めるが、巻物が一本、腕から落ちて転がった。
 だが、イルカはそれを拾おうとせず、ただ、こちらを笠の下から凝視する火影の視線に射ぬかれて身動きできずにいた。
「・・・・・・もう、良いのだぞ・・・」
「・・・え?」
 低く、単調な火影の口調。
「先月をもって、『アレ』の解禁令が発布された」
「アレって・・・・」
 いぶかしげにイルカが首を少し傾げる。
「もう、誰に遠慮をする必要はないんじゃぞ・・・イルカよ」
「え?」
 火影の言葉を何度も頭の中で反芻する。
 だが、言葉の真意が読み取れない。
戸惑ったまま立ち尽くすイルカの腕に、火影が拾い上げた巻物を乗せた。
そして、
「お前もそろそろ、好きなように、やってみるが良い・・・・。自分自身の全てを出してな・・・・」
「三代目・・・・・」
 説明を求めるまもなく、火影はイルカからきびすを返す。
 イルカに背を向け、窓から差しこむ光を全身に受けて、火影は、最後の言葉を残す。
「お前は十分、我慢してきた・・・・・」
「・・・・・・・・・・・さ、三代目・・・っ・・・」
 イルカが呼びとめる声も無視して、火影は廊下の先へと消えていった。
 赤い陽光で染まりかけた、時間のとまった廊下の真中に取り残されたイルカは、火影がいなくなった廊下の先をみつめていた。
 視線を窓の外に向け、
「・・・・・」
 ふと足元を見つめて、
「・・・・・」
 そして再び、廊下の先を眺める。
「・・・・あ・・・・・」
 思わず口から漏れた声。
 脳裏の片隅に、ろうそくに火が灯されたように甦った、ある記憶。
「・・・・まさか・・・・」
巻物を抱える腕が、微かに震えた。
「まさか『アレの解禁』って・・・・・・」
 それは、
体の芯から伝わる、
自分自身の、臓腑の躍動だった。
「自分自身の全てを出して」
 そのとき、イルカの脳裏には、また、ナルトの笑顔が、思い出された。
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2006.06.09.Fri/23:55

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北野ふゆ子

Author:北野ふゆ子
> 昔は、ゲームやマンガの二次創作をしておりました。現在は主にオリジナルネット小説を執筆しています。 得意は「シリアス」「アクション」「サスペンス」です。

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