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  Over the Wall vol.0 
序章


 事故・二〇〇〇年九月二十日

 夏も過ぎて、葉が色づこうという季節のある日、高校一年の代沢尚人(しろさわ・なおと)は下校の途にいた。
 丘にさしかかる。高い塀を越えて枝を伸ばす木の葉が移り変わる季節を表していた。歩道を行く尚人や下校中の生徒達の頭上を舞う葉。その下を尚人は、とにかく眠気をこらえながら歩いていた。気温にメリハリの無い中間的季節、春や秋はいつも眠い。
 長い坂の終わりに交差点が見える。この時間は車通りがほとんど無く、ここいら近所はやけに静かだ。そしてそこを通る生徒達も皆、何故か無言だ。余りの静寂に、耳鳴りさえする。その耳鳴りに紛れ、珍しくエンジン音が聞こえてきた。あくびを無理に止めて尚人が後方を振り返ると、緩やかな丘を頂上から下ってくるバンが見えた。4WDのようだ。道が空いているのを良い事に、多少スピードをオーバーしているようだ。道路を闊歩していた学生達は歩道へ上がる。
 はじめから歩道にいた尚人は前方に向き直り、もうじき下りきる坂を進み続けた。エンジン音は益々近づいてくる。もうすぐ尚人の脇を通り過ぎて、目の前の交差点を曲がるか、真っ直ぐ行くかする筈だ。信号はつい先程、青に変わったばかりだった。
 だが、その直後、背後から聞こえてきたのは、エンジン音を掻き消すスリップ音。後に人から話を聞いてそれが、タイヤのスリップ音だと分かったが、その時その瞬間の尚人は、その甲高い音が、女の子の叫び声かと思った。振り向くと、目の前に、バンが横倒しになってつっこんでくるまさに最中だった。
「――うわっ!」
 尚人の足は、反射的に身を守ろうと地面を蹴って後ろ向きに飛びのいた。バンはブロック塀に突っ込み、尚人はバンの直撃を避けたものの、反転したバンの後部に襲われ、激突され、その衝撃で吹っ飛んだ。掛けていた眼鏡がどこかへ飛んだ。無数の弾け散ったブロックが、尚人の全身を打った。直後、尚人は地面に叩き付けられる。そしてその瞬間、痛みより先に、視界が消えた。
 人の叫び声。
 ブロックが固いものに当たる音。
 繰り返される、尚人を呼ぶ声。
 聴覚だけが、遠ざかる意識の縁をつかんでいた。

 ――――――……

 そして、本当に何もかもが消えていった。
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2006.05.15.Mon/02:15
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Author:北野ふゆ子
> 昔は、ゲームやマンガの二次創作をしておりました。現在は主にオリジナルネット小説を執筆しています。 得意は「シリアス」「アクション」「サスペンス」です。

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