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  逆拘 第4話 
 
  逆拘 4

 

 イルカの体を支えるために添えられていたカカシの手を乱暴に振り解く。
 こめかみを手のひらで押さえて、イルカは眉間を顰めた。

 ひどい頭痛。
 嘔吐感。

 筋肉が張りつめる感覚に、イルカの体が一度震えると、硬直した。

 ざわり

 空気が揺れた。
 同時に、
「見つけたーーっ!!」
 という子供達の声と共に、カカシのすぐ頭上を何かが風を切った。
「っ……!」
 カカシは我に返って眼を見開く。
 背後から在らぬ方向に放たれた三本の苦無が、生い茂るシダに突き刺さる。
「ちぃっ!」
 大きく草が揺れ、枝葉が派手に散った。そこ周辺の空気が乱れる。姿を消していた黒い影が、刹那、光の中に影を落とした。
 一瞬後、カカシの両手は無意識に苦無を拾い上げ、
「そこか!」
 投げ付けていた。
「うぉっ!」
 黒い装束を掠った苦無の刃先は、黒布をちぎり取って木の幹に突き刺さった。
 一陣の風がつむじを描いて砂と土を巻き上げると、そこに忍びが一人、姿を現した。その両手は、結びかけの印を象っていた。中途半端にとぎれてしまった印が生み出した「気」が弾け、空気を乱雑に揺らす。
 カカシの足は、苦無を投げると同時に、地面を蹴っていた。瞬時に現れた気配を読み、その後ろに回る。
「なにっ…!」
 出かかった言葉を振り払うように、姿を現した忍び、鋳槍の背中を、カカシの苦無が縦に切り裂いていた。
「ぐあああああぁぁっ!」
「畜生が!」
 語尾がかき消えた断末魔に続き、残り二人が姿を現した。
 カカシが着地した足下に、ぐしゃりと音をたてて潰れた、汚物のような鋳槍の遺骸。
 途端、
「っぐ……」
 呻きを吐き出し、イルカが一度大きく体を震わせる。
 脳内を突き刺す激痛と、胸をかき乱す嘔吐感覚に、身体が悲鳴を上げた。膝が笑う。たまらず、体が地面に沈んだ。両手両膝をつく。
「イルカ先生…っ……」
 ナルトが飛び出す。
「待て!」とサスケがその襟首を掴んで引き止める。
「……………」
 足下に崩れた遺骸から刀を奪ったカカシ。異変をきたしたイルカの方を見やる。同じようにその様子を一瞥した曇と縢が大きく舌打ちしたのが耳に飛び込んで来た。
 地面に手と膝をついたイルカは、片手で額を押さえて頭を振る。
「…う……」
 刹那に音を失った森の中で、
 イルカの声だけが、カカシやナルトらの耳に入ってくる。
「…………?」
 手を地面についたまま、イルカが苦しげに顔を上げた。
 薄靄のように歪む視界の中で、黄色い頭の子供が、見える。
 記憶が導き出した答のままに、イルカはその名を呼んだ。

「………ナルト…………?」

「ちいっ…術が解けやがった…!」
 その声と同時に、
「っ!」
 曇と縢が同時に地を蹴った。
 イルカの方に顔を向けていたカカシに、襲いかかる。
「カカシ先生!!」
 サクラの叫び。
 カカシの視界の中では、イルカに駆け寄るナルトの姿が映っていた。イルカの肩に手を触れて、揺すっている光景が。
 奪った刀を握る手は、腿の脇に垂れ下がったまま、動かない。
「どこを見ている!」
 頭上から長刀を振りかざした縢の嘲叫が響いた。
「カカシせ……」
 出かかったサクラの、二度目の叫び。
 直後、
 空気が一閃した。
「………っ!!」
 息が逆流する短い叫びと共に、血霧が辺りを包み込むように噴出した。
 サクラとサスケの視界から、カカシの姿が消えたかに見える。
「え…?」
 遅れてナルトがイルカから視線をはずして振り向いた時には、そこに見える光景は…
 カカシの足下に増えていた、血と肉の塊。
 そして、血の池。
「………チャクラ切れのくせに俺に勝てると思ったか……」
 微かに息が残る肉の塊に、カカシは低い言葉を吐き捨てた。
 虫が蠢くように、小さな痙攣を繰り返す曇の体。
 這い蹲るように地に伏せた、縢。カカシのつま先が、ごろりとその体を引繰り返した。
「ぐ…ぅ…」
 血泡を吹き出しながら、尚も息のある縢の胸元を踏みつけながら、カカシはどこまで冷え切った瞳で見下ろす。
 だが…
「くくっ……」
 喉元に刀の切っ先をあてがわれているに関わらず、縢の口から漏れるのは、笑い。
 隣で、曇はすでに息絶えていた。
「……何がおかしい……」
 胸底から沸き立つ不快感と怒りを抑えながら、カカシはその笑みの意味を探る。
 カカシの殺気を帯びた視線に縫いつけられながら、縢は血泡を吹く口で、最後の言葉を絞り出した。
「愚かなり…………」
 そのまま、黒い影に隠れた両目を見開いたまま、縢もそこで、事切れた。
 カカシの問いに答えてやるものかと言わんばかりに。
「…………」
 足下に増えた遺骸。
 手にしていた敵の刀を、死体の一つに突き立てると、カカシは踵を返した。

 音を取り戻した森。

 頭上で、枝葉が風にそよがれて漣に似た揺音をたてている。風にのって、鼻腔をくすぐる血匂。振り返ると、カカシの視界にイルカの姿が入った。
 片膝をつき、側にいるナルトに、苦しげながらも笑みを向けている。
 駆け寄ったサクラにも、そして、サスケにも。
 招き迎えるように、サクラがカカシを振り返った。
 そして、ナルトも。
「カカシせんせー、イルカ先生、俺達の事分かるってばよ!」
 イルカの肩にしがみついたまま、ナルトがカカシを呼んだ。
 ナルトの背を、軽く叩いてイルカは、ゆっくりとカカシを振り返った。
「………」
 そこで一度、カカシは踏み出した足を止める。
「………」
 複雑な面持ちでこちらを見つめるイルカの、黒い瞳とまっすぐにかち合ったからだ。
 しがみつくナルトをあやすようにして体から離して、イルカはその場から立ち上がった。
 調子が優れないのか、足取りが確かでは無い。
 ナルトに「大丈夫?」と心配されて、「大丈夫だよ」と微笑み返して、イルカはカカシに向かって歩を進める。
「カカシ先生……」
 と
 その口が、呼ぶ。
 笑みとも、照れとも、悲しみとも言えない、
 様々な感情を飲み込んだ、そんな面持ちで、黒髪の男は歩み寄る。時折、蹌踉めきながら。
 カカシも、歩を踏み出す。
 一歩一歩、近づくにつれて、イルカの瞳に宿る黒曜色が木漏れ日に照らされて濃緑に光るのが、カカシにも分かった。
 握手を求めるように、イルカの右手がゆっくりと伸ばされた。踏み出したイルカの左足がおぼつかなく揺らぎ、カカシは無意識に、そののばされた手に自らの手を、差し出した。

 何かが、背筋を走った。

 
  「死ね」

 
 脳裏に響くような、低い声。
 刹那、
 白い閃光がとっさに飛び退いたカカシの脇腹を貫通した。

 再び
 鮮烈な血匂

「イル……っ!」
 目がくらむ、突き刺すような閃光が一瞬のうちに消え去り、そこに現れた光景は、ナルト達の前に現れた光景は、

 その場に崩れ落ちたカカシを見下ろす、右手を真紅に染めたイルカだった。

 

 

 

続く


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2006.05.15.Mon/01:06
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Author:北野ふゆ子
> 昔は、ゲームやマンガの二次創作をしておりました。現在は主にオリジナルネット小説を執筆しています。 得意は「シリアス」「アクション」「サスペンス」です。

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