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  逆拘 第3話 
 
  逆拘 3

 
gyakkyou-img2-1.jpg

挿絵:猫目堂様(昔の頂き物ですm(_ _)m)
 




くないを構えたカカシの姿に、イルカが微かに、笑った。

口元を微かに、笑う形に作ったイルカが、低く、声を発した。

『・・・・ついに本気になったか・・・?写輪眼・・・』

「・・・・」

だがカカシはそれに応えず、くないを構えた姿勢のまま。

くつくつと、イルカが肩で笑う。

瞳には、相変わらず「無」しかない、空虚な笑い。それが、カカシの首筋に、悪寒を走らせた。

 

 

やめろ・・・

その人に・・・

そんな表情をさせるな・・・・

 

 

胸のうちが煮え繰り返るのを抑え、カカシはじっと冷静さを保つ。

 

『だがその意気込み・・・どこまで保つかな・・・・』

イルカは、自分の右掌とカカシを交互に見やりながら、言葉を続けた。

『正直、こちらも驚いている・・・』

「・・・何だと?」

『まさかこの男にこれだけの力・・・気術使いであったとは・・・嬉しい計算違いだったな・・・』

イルカがカカシの正面に向き直る。自分の胸元に手を当てて。

『本来は、貴様を油断させるための仕掛けの一部に過ぎなかったのだが・・・・・』

カカシは、イルカが発する「敵」の言葉に憎悪の眼を向ける。

 

そのカカシの視界の中、イルカの背後に、あらたに三人の影が現れた。

 

「!」

 

子供達が息を飲む。

 

闇夜を思わせる、全身黒装束の忍び達。

顔全体を覆面で覆い、正体を伺い知る事は出来ない。

だが、その気配や、意識操作術を操るあたり、相当の手練れである事がわかる。

 

「その装束・・・確か片岡の・・・・・暗部・・・」

 覆面の下から、カカシの低声。

『覚えてもらっているようだな。久しいぞ写輪眼・・・』

上背のある忍が笑う。それに応える形で、カカシは口端に嘲笑を漏らした。

「渦裳一族を知らない奴はいないさ・・・」

代々、強大な力を持ちながら里には属さず、闇世界を暗躍するいわゆる抜け忍一族、「渦裳」。

禍々しい戦や事件には、必ずと言って良いほどこの一族が裏闇で関わっていると言えた。

カカシが請け負った、

闇取引の網張り屋である片岡一族との戦任務。

そこにも、渦裳の影があった。

その中でも、この渦裳の三兄弟、縢(かがり)、鋳槍(いやり)、曇(くもり)の名は片岡の暗部中枢として恐れられていた。

カカシの全身に、強い静電気が走った。

怒りによる殺気が生じさせた、軽い電流だ。

 

イルカの背後に現れた三人。そのうちの一人、曇が、イルカの前に一歩、歩み出た。

そして今度は、イルカの口を借りるのではなく、自らの言葉でカカシに「宣告」をする。

 

「こいつを道具に、我らが手を出さずとも、貴様とガキもろとも地獄に道連れにしてやれそうだ・・・・」

「えっ・・・」と肩をこわばらせるサクラ。

子供達を背後にかばい、カカシは一層鋭い視線を忍に向ける。

ナルトが噛みつかんばかりに身を乗り出す。それをサスケが後ろから抑える。

「せいぜい、楽しませてくれよ」

そう含み笑いと共に言い残すと、

「あっ!コノヤロー!」

三人の忍び達はその場から姿を消した。

「ヒキョーモノー!」

 とカカシの背後から駆け出そうとするナルトの、サスケが衿を引っ掴む。

「・・・・・・・・」

カカシは咄嗟に消えた気配を探ったが、乱れ飛ぶ気と風に紛れて、禍々しい気配は空気へと溶けてしまっていた。

生温い風が、緩慢に足下でくすぶる。

不知火の森。

濃い緑が折り重なる薄暗い森が、深く沈んだ重い空気の中によどむ。

一直線上に向かい合うカカシとイルカ。

身じろぎせず、視線を突き刺し合う。

「せ、先生・・・「気術使い」・・・って・・・?」

 沈黙に耐えきれず、震える声で、サクラがカカシを横目で見る。

その隣で、サスケも無言でカカシの応えを待った。

 

「気術使い」

 

言葉だけは知っていた。

 

非常に稀な確率で生まれてくる、チャクラの力を借りずに膨大な気を生みだし操る事の出来る・・。木の葉にも幾人かいると噂で聞いていたが、まさか・・・。こんな身近に・・。

「さっきの・・・俺達を跳ね飛ばした術・・・あれも『気術』の一種なのか・・・?」

黙りこんでイルカを見据えるカカシに、サスケがぽつりと言葉をつく。

「・・・・ああ・・」

低い声で、カカシが答える。

「イルカ先生はさっき・・・印も組まずに言霊も唱えずに、凄まじい『気』を発しただろう・・・?」

「そういえば・・・」

忍術は、いずれも型どおりの印を組むか、言霊を唱えないと、力を発する事が出来ないのだ。

なぜなら、印や言霊そのものに、忍者の術力を引き出す力があるからだ。

だが、先ほど子供達を跳ね飛ばした、イルカが発した衝撃波・・・。両手両足を掴まれたまま、そして言霊も唱えることなく発したものだった。

「あれは・・・イルカ先生自身から発せられた『気』の爆発だ」

 

そもそも気術は、忍術とは類が異なる為、しばし区別される。

忍術は、印や言霊自身が持つ力をどれだけ大きく発揮させるか、それが忍おのおのの、チャクラ量にかかっている。

つまり、印や言霊、そしてチャクラの相互作用によって「忍術」が成り立つのだ。

だが、気術者は、自らの気を印や言霊無しに制御する事が可能なのである。

気を凝縮させて爆発させ、「攻撃」の術に組みかえる事も、したがって可能なのだ。

 

「・・・よく分かんないけど・・・・要するに凄い事・・なんだろ・・?」

敵を睨みつけながら、ナルトが言う。

「何にしたって・・・・イルカ先生を助けなきゃだってばよ・・!」

 

「・・・・そうだな・・」

 

「でも」と、今にも飛び出していきそうにイキるナルトを、カカシはそっと制する。

 

「お前達は、下がってろ・・手は出すな。そして、ここから離れるんじゃないぞ・・・」

 姿無き敵が、どこにいるか分からないのだから。

「・・・・」

 

イルカが、無防備な構えのまま、カカシに向かって歩みだしてくる。

 

「・・・・・・」

このまま、くないを投げつければ、いともたやすく心の臓をし止められそうな・・・。

 

これではまるで、

カカシがどうあってもイルカを傷つける事が出来ない事を、

奴らは知っているかのよう・・・。

 

「わかったな、お前達・・・」

近づいてくるイルカに眼を向けたまま、カカシが背後の子供達に声を落とす。

「下がってろ」

再度、戒めの言葉を発したカカシに、サスケがしぶしぶ、ナルトの襟を掴み、呆然とするサクラの腕を引っ張り上げる。

「二人とも何かあったらただじゃおかないってばよーっ!」

サスケにずるずる引きずられながらナルトがもがく。

二人を引きずり、サスケは近くの大岩の影にサクラを座らせ、暴れるナルトを押さえつけて自分もカカシとイルカの様子を伺う。

カカシの後ろ姿、そして、その向こうに見えるイルカ。そしてその更に向こうで、二人の様子をまるで見世物を楽しむように眺めている三人の忍達。

 

イルカは尚も無防備にカカシに近づいてくる。

カカシはくないを逆手に構えなおした。

 

奴らの居所が分かれば・・・・・・

イルカに視を向けつつ、カカシは五感を空気に集中させる。

空気の揺れを読もうとする。

だが、

「!」

沈み込む様に重心を落として地面を蹴り、イルカが下から潜りこんで来た。

「つっ!」

咄嗟に逆刃にくないを振る。

「先生っ!」

サスケに押さえつけられた下から、ナルトが叫ぶ。

その声に、サクラが我に返り肩をびくつかせた。

『っふ・・・』

カカシの動きを予測していたのか、イルカが上半身を後ろに反らせ、くないを振りかざしたカカシの右手を避ける。

そのまま体を回転させ、着地したところをすかさずカカシに全身で飛びかかる。

その勢いを利用し、カカシがイルカの肩に手を置き、体重を掛ける。そして、飛び越えざまにイルカの脇腹に蹴りを叩きこんだ。

「っぐぁ・・・・!」

一瞬、呼吸を奪われ、イルカが肩から地面に倒れこんだ。

その上から、カカシがくないを振りかざす。

 

「や、やめ・・・っ!」

ナルトの口から言葉にならなり叫びが絞りだされた。

 

無理な体勢からイルカは上半身を起こし、振り下ろされるくないを握るカカシの手首を掴もうと手を伸ばす。

だが、その手をカカシが巧みに払う。

そしてそのまま、くないを振り下ろした。

 

ザクッ・・・

と音がして、

二本のくないが、イルカのプロテクターの肩当てを貫通した。

イルカはプロテクターの右肩当てごと地面に縫いつけられる。

すかさず、カカシはもう片方の肩も狙うが、

イルカは腰を持ち上げ足を蹴り上げ、同時に自由な左腕を伸ばし、

左手でカカシの手を掴み、蹴り上げた足の勢いを利用してカカシの体を左に引き倒す。

だがすぐさま腕を伸ばし、カカシは再び上からイルカの肩を掴む。

イルカはプロテクターの肩部分を縫いつけるくないを引き抜こうとして柄を握る。その上からカカシがイルカの手を押さえつける。

 

両者の動きが、そこで止まった。

力のせめぎ合い。

「ぐ・・・」

 イルカは、カカシに気配を探る余裕も与えてはくれない。

 

「くそっ・・・!」

無意識に、ナルトが体を起こす。

駆け出しかけた所で、

「待って!ナルト!」

サクラの手が乱暴にナルトの肩を掴んだ。

「もう・・・止めなきゃダメだってばよっ!」

 冷静さを失いかけているナルトは、ぶつかり合う両者を遠くに指さしながら怒鳴る。

 

「っ・・・」

カカシの体の下で、イルカが軽く舌打ちする。

そして、また、口元に笑み・・・

「っ!!」

カカシに押さえつけらた手から、白い光が閃いた。

「熱っ・・・!」

押さえつけていたイルカの手が、焼いた鉄のように急激に熱を帯びた。

カカシは思わずおさえていた手を離す。

「今私たちが飛び出したって・・・あの二人の間に入る事なんて出来るわけないでしょ!」

ナルトの声調につられ、サクラもついと大声になる。

「・・・・・・」

サスケはこめかみに汗を浮かべながらも、無言でそのやりとりと、戦う両者を見やっていた。

「でもっ・・・」

「それより、今私たちが出来る事をするの!」

「・・・・・・・・・」

ナルトの両肩を掴むサクラの手に、力がこもる。

この少女の細腕のどこに、このような力があるのかと、思うほどに。

「どうすればいいんだってば・・・」

「探すのよ・・・」

「・・・・」

「敵の居場所を探すの!強い意識操作系の術は、絶えず術者がチャクラを術に集中させないと、やり手の忍には簡単に解かれてしまう・・・。イルカ先生にかかっている術だって、多分、絶えず敵がチャクラを集中させて、消耗しないといけないような強い術だと思うの。イルカ先生やカカシ先生にだって解けないんだから・・・。だから、奴らは一気に私たちやカカシ先生に襲いかかるような事はしないんだわ・・・」

サクラの説明に、サスケが顔を上げる。

「そっか・・・そうなんだってばよ・・・」

「落ち着いて、落ち着いて・・気を集中させて、敵の気配を探るの。それをカカシ先生に教えれば・・・カカシ先生はきっと何とかしてくれる・・・私たちだって、何とか出来る。ね、ナルト、サスケくん」

忍の心得が、浮かんでくる。

第十二条「常に冷静を保ち 状況把握を心がけ 自らの役割を判断せよ」

サクラの強い言葉に、ナルトは「ん」と口元を引き締めた。

サスケが、頷いた。

「っあ!」

イルカは自由になった手でくないを引き抜き、そして体を回転させてカカシの下から抜け出した。

イルカの体を捕まえようとカカシはすかさず足をかけ、手を伸ばす。

だが、同時にイルカもカカシの顔面に手をかざし・・

「!」

その掌から、白い衝撃波を、カカシの顔面を狙って撃ち込んだ。

「くっ!!」

印や言霊を使わない分、攻撃の予測がまったくつかない。

直撃していれば、顔をこなごなに砕かれていただろう。

カカシは寸手でそれをかわす。

だが、頬と肩を掠めていった閃光は、カカシの覆面を破り、肩のプロテクターを引き裂いた。

尚も口元に笑みを浮かべイルカは、瞬間、ひるんだカカシにむけて、くないを振り下ろした。

「危ない!」

サスケが反射的に叫んだ。

「っ!」

掌を貫かれるのを覚悟で、カカシはとっさに左手で顔面を防御する。

そして、くないを握った右手を、ほぼ同時に振り上げた。

 

「・・・・!」

 

だが、イルカが振り下ろしたくないがカカシの掌を貫く寸前、

またはカカシのくないがイルカに振り上げられる寸前、

 

 

 

「!?」

 

 

 

 

 

イルカの手が止まった。

 

 

 

 

静寂

 

 

 

 

「・・・・・・?」

 

 

 

・・・・・・どこ・・・・・どこなの・・・・・・

目の前の光景に体を震わせながらも、サクラは懸命に気配を探る。

 

逆光の中、くないを振り下ろしかけ、不自然な体勢のイルカと、

それを防ごうと手を突きだしたカカシの影が映る。

 

「い、イルカ先生・・・・」

 

 

眼を見開いたカカシの口から、言葉がもれる。

 

くないを持っていたカカシの手が、ゆっくりと下ろされた。

 

 

 

「・・・先生・・・」

 

岩影にしゃがんでいたナルトが、つい立ちあがる。

 

 

サスケも、眉をひそめて立ちあがりかけたが・・・

  ・・・・・どこだ・・・・・・

   その瞬間に気配が静寂により乱れが消え失せた事に気づき、

    唇をかみしめて神経を練りおこす。

 

 

 

「・・・う・・・・・・」

イルカの口からうめき声が漏れた。

 

くないを振り下ろさんとしていた右手首を、自らの左手で、掴んで引きとめていた。

なおもカカシの命を狙って力をこめる右手、そしてそれを必死で阻止しようとする左手が、まるで別人同士の手のように、せめぎ合っているのだ。

イルカのその顔には、

 

「っ・・・・・・く・・・・」

苦渋の色。

「は・・・・・っ・・・・・・・」

くないを握る手が震えていた。

そればかりか、大量の汗が頬を伝い、肩も苦しげな呼吸に上下している。

不自然な息使いだ。

 

これは・・・

カカシはイルカの手からくないを奪うと、それを投げ捨てる。

イルカの両肩を掴んで、強く揺さぶった。

 

「止めろ!あらがうな・・・・俺は大丈夫だから・・・・」

 

深い意識下でイルカは、かけられた術に懸命に対抗していたのだ。

だが、強い術力によってかけられた意識操作術を無理に解こうとすれば、その副作用としてイルカ本人の意識破壊、身体破壊につながりかねない。

 

「ごほっ・・・・」

イルカが激しく咳き込む。

 

苦しそうに息をはきながら、だがイルカは尚も鋭い視線をカカシにぶつけてくる。

カカシの腕を振り払い、体をふらつかせながら、立ちあがった。

 

 

『ちっ・・・まさか術が解けかかるとはな・・・!』

 イルカの口が、苦々しくそう吐き捨てた。

 

 

そのとき、

 空気が揺れた。

「「「見つけたっ!」」」

 子供三人の声が、同時に上がった。



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2006.04.27.Thu/22:39

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北野ふゆ子

Author:北野ふゆ子
> 昔は、ゲームやマンガの二次創作をしておりました。現在は主にオリジナルネット小説を執筆しています。 得意は「シリアス」「アクション」「サスペンス」です。

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