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  破壊者 


 それらはまるで、怒涛たる波動。

 小高い丘から姿を現した鮮やかな青の集団。
 豪快に翻る三色の軍旗は、誇り高き軍神の母、マチルダの紋章。
 一糸乱れぬ扇形の隊列を成したその先頭に立つ黒髪の青年が、高らかに名乗りをあげた。

「我はマチルダ騎士団青騎士団長マイクロトフ!傭兵部隊ビクトール殿に加勢いたす!!」

 この広い戦場で、
 雑伐然とした中で、
 青年の稟声は力強くそして鮮明に響き渡った。
 その一瞬だけ全ての者が言葉をつぐみ、場が静まったような気がした。
 青騎士団長マイクロトフ。凛と伸びた姿勢、その堂々たる構えは音に聞こえるマチルダの軍神そのもの。
 新同盟軍傭兵部隊を率いる将軍格の一人、ビクトールはその時にそう感じていた。

 青年は腰に差した大柄な剣を抜刀すると、自らが率いる数百の騎士達の先陣を切るべく手綱を引いた。
「続け!」
 そして一気に丘を駆け下りる。
「オオオオオォッ!」
 それに続き大地を揺るがすかのごとく男達の鬨が天を突き、怒涛たる波の如く混乱する戦場の中へと雪崩れ込んで来た。
「援軍だ!」
「騎士団の援軍が来てくれた!」
 強制撤退寸前にまで追いこまれていたミューズ防衛軍らはまるで救世主かの如く登場した援軍に沸き立った。
「すっごぉーい!カッコイイ!」
 ビクトールの横で不慣れな馬をなんとか扱い闘いに参戦するリュー、そしてナナミも無邪気に声を上げる。

 形成は一気に逆転した。
 青騎士団長と名乗った青年を先頭に、青き騎士達は次々とハイランド軍勢を退けていく。個人個人の戦闘能力の高さもさる事ながら、見事な連携と統率力は実数より遥かに上回る戦闘効力を生み出している。
「勝てるかもしれないぜ!!」
 ビクトールの言葉にミューズ防衛軍の誰もが、圧倒的条件不利だった戦の勝利を垣間見かけた。
 直後、
「見ろ!」
 フリックの声に振り向けば、
 先ほど青騎士団らが姿を現した丘の頂上から、今度は深紅の軍勢が姿を現したのである。
 マチルダ騎士団、赤騎士団。
 その戦闘に立つのは、赤騎士団長の青年。
 深紅の装束に引き立つ琥珀色の髪が風になびくその姿は、軍神の母と呼ばれる女神マチルダのあらましそのもの。

 勝てる
 希望は確信に変わった。

 だがそれが束の間の事であると、その直後まで誰も知り得ぬのである。

 
 突如、マチルダの騎士団達は戦線を撤退した。
 
 それによりミューズは陥落。
 傭兵部隊の負った傷は、深いものとなった。








 マチルダ騎士団の一部が新同盟軍に加盟する。
 軍師シュウの言葉に、新同盟軍の兵達はざわめいた。
 中には舌打ちをこれ見よがしに聞かせて罵言を吐き捨てる者もある。
「俺達を見捨てて尻尾巻いて逃げた騎士団だろ?」
「何をいまさら!」
 そんな声がざわめきの間から聞こえた。
 壇上にたつ盟主リューは、表情を変えずに淡々と報告を述べていくシュウを横目で眺める。表情を曇らせる少年の様子を、「腐れ縁」と周囲から不本意にも呼ばれている二人の青年がこちらも曇った表情で見つめていた。
 フリックとビクトール。
 傭兵部隊を組織した彼らは現在、新同盟軍内にて兵士、傭兵らを指揮するいわゆる「将軍」的立場にたっていた。

 騎士団との同盟を提案すべくロックアックスに旅立っていた盟主リュー、ナナミ、ビクトール、そしてフリックら一行は、そこで驚くべき光景を目にした。
 マチルダ騎士団の頂、白騎士団長ゴルドーに同盟を退けられるも、その意向に激しく反発した青騎士団長と赤騎士団長が彼らの前で騎士団脱退を明言。騎士の証エンブレムを投げ捨て、新同盟軍盟主リューに誓いを立てたのだ。それだけではなく、彼らを慕い、そしてゴルドーに同じく反感を抱いていた騎士達も次々と脱退。両赤青騎士団長と共に同盟軍入軍を希望してきたのである。
 その数、約一万。
 現在、ロックアックスより脱出した騎士達は、本拠地付近の村にて待機中である。迎え入れる準備をするため、リュー達一行が先に帰還したのだ。
「士気が多少下がろうが反発を買おうが、離脱してきたマチルダ騎士団を迎え入れる事は絶対だ」
 開口一斉、シュウはそう断言する。
「一万というその軍事力、そして騎士団独特の組織力。なんとしても必要だ」
「ふぅー…ん…って一万!?そんなにいたのか!」
 シュウが珍しく他人に比較的丁寧で肯定的な言葉を用いた事を不思議に思った直後、提示された数字に驚きフリックが声を荒げた。
「そいつは有難い話だが、でもなぁ…」
 素直に喜ぶ様子の見えない面々にビクトールは太い腕を組んだまま肩を竦めた。
「何が問題なんだ?一気に兵力増大じゃねぇか。しかもそんだけ人間を集めてこられる実力のある騎士団長サマ達まで一緒なんだろ?言う事無いんじゃないか?」
「世の中はお前みたいに全てが単純じゃないんだ」
「悪かったな単細胞で」
 フリックの憎まれ口も慣れたものでビクトールは鼻先で笑い飛ばす。そんな様子に幾らか安堵した様子で盟主リューとナナミも顔を見合わせて笑った。
「そう。世の中はお前みたいに単純ではない。軍隊も然り」
 シュウがフリックの言葉を補い追い討ちをかける。
「……ぉい」
「そこで、君達の役割はわかったろう?騎士団を迎える事で起こるであろう衝突を緩和させ、現属の兵士や傭兵らの士気の低下を防ぐのだ」
「簡単に言ってくれるけどなぁ」
 フリックが心底から吐き出した苦笑と溜息を漏らす。
「そういう訳で、フリックさん、ビクトールさん、お願いです」
 リューが更にシュウの言葉を改める。
「新同盟軍の皆と、騎士団の皆さんの間を取り持って欲しいんです。僕ももちろん、努力します。でも、やっぱり傭兵部隊の皆はお二人を慕っていますし。是非、お願いします!」
 彼にこう言われては仕方がない。元より承知している。
「もちろんだ!まかせろ!」
 ビクトールは満面の笑みで胸を叩いた。
「大丈夫。なんとかなるよう、努力するさ」
 フリックも、笑みと共に頷いた。
 
 だが現実はやはり、フリックやシュウの言葉通り単純でない。

 新しく増築したばかりの城の一棟が、新しく加盟するマチルダ騎士団達に宛がわれる事となった。
「何で後から来る奴にそこをやるんだ」
「そこは俺達のための場所じゃなかったのか」
 そんな声があちこちから上がる。
 無理もない。在籍している兵達の為にと増築した新棟であったはずが、騎士達の執務舎、宿舎として丸々『横取り』された形となったのだ。
「仕方無いだろ?何せ一万近い軍勢だ。まさか外で寝泊りさせるわけにはいかないしよ」
 ビクトールとフリックはそう言い宥めて回るが、それでも渋々といった様子で皆は口を噤む。
 更に問題はこれだけではなく、シュウが発表した騎士団の同盟軍内での軍職の割り当てにも不満が続出した。
 両騎士団長を騎馬隊頭領兼騎馬軍筆頭とし、騎士団の各部隊長を騎馬隊、歩兵隊、特殊部隊、魔法部隊など其々の部隊の指揮筆頭とする。また、その他軍事執務においての各上級役職に、騎士がそれぞれ据えられる事となったのだ。
「後から来た奴に従えってのか」
 当然、現属の同盟軍の人間にとって面白いはずがない。
「しかし、彼らは軍事のプロフェッショナルです。シュウ殿の人事采配は最も効率的かと思われますが」
 リドリーもそのように判断しているとフリックの口から告げられると、これもまた同盟軍兵や傭兵らの面々は反論を諦めざるをえないのだ。
 不満はいつ爆発するやもしれぬ状態。
 騎士団到着は明日に迫っていた。
「しょっぱなこれじゃ…先が思いやられるなぁ…」
「だなぁ…」
 ビクトールの言葉にフリックは胃のあたりを抑えて同意した。
 唯一の救いは、宿星を持つ面々が一様に「いいんじゃないの?」とシュウの判断を肯定してくれている事だけだった。




 
 眩いばかりの昇陽と共に、マチルダ騎士団が新同盟軍に姿を現した。湖畔に聳える城の正門の前にて。軍主、軍師、そしてフリック、ビクトールら傭兵部隊の主要人物らが出迎える中、騎馬にまたがった二人の青年が前に進み出た。
 赤騎士団長と、青騎士団長の両者である。
 二人が軽い身のこなしで馬から下りると、その背後に控えていた騎士達も一斉に下馬する。その動き一つ一つが全て、精巧な芸術品のように乱れが無い。
「………」
 洗練された統率感に、迎えに出た同盟軍一同は軽い溜息を覚えた。
 両団長がリューの前に歩み寄る。
 恭しく深々と頭を垂れた。
「わざわざのお出迎え、感謝致します」
「本日より新同盟軍の末席に加盟させて戴きます、元マチルダ騎士団一同、軍主リュー様に剣を捧げてゆく所存です」
 整然とした言葉には曇り一つなく、崇高な宗教句でも述べているかのよう。
(俺達には逆立ちしても言えない言葉だ…)
 若干のむず痒さを背中におぼえつつも、ビクトールとフリックは一種の酔いに似た感覚におそわれた。
「こちらこそ、宜しくお願いします!が、頑張りましょうね」
 一瞬呆気にとられていたリューだが、シュウに肘で小突かれて我に返ると負けじと頭を下げた。
「ロックアックスでは大変御世話様でした!これからも宜しくお願いします!」
 続いてナナミの活気溢れる挨拶も続く。
 学生が教師にする挨拶じゃあるまいし。
 フリックは苦笑いするが、当の騎士団長たちは一向に気にする素振りもみせず、柔らかい笑みを二人に向けた。
 非常に好感が持てた。
 背後に居並ぶ堅苦しい面持ちの騎士達も、リューとナナミのあどけなさにふと緊張を緩めた笑みをたたえる。
 これもまた、好感が持てた。
 これならば苦労も無いだろう。
 ビクトールとフリックはそう思ったが、
 これもまた、甘い考えだとすぐに気付くのだった。

「団長が同部屋とは……」
 騎士一団を宿舎と執務舎に案内し、一通りの部屋割りなどが終了した。諸々の連絡、案内などを行うために一同が大講堂に集る。
 そんな時、ぽつりと呟いた誰かの言葉が騎士達に感染した。
「カミュー様とマイクロトフ様に対しこれはあまりの扱い」
「な…」
「は?」
 怒りを目許に表し絶句する新同盟軍の兵達、そして唖然とするビクトールと、「げ」と顔を青くするフリックを余所に、団長室が同部屋である事に不満を漏らす騎士達が部屋割りを変える相談を始めた。
「何様だあいつら!」
 傭兵らの間からも陰口があがる。
「ちょ…」
 場を取り持とうと慌てて口を挟もうとするフリックの前に、当の団長二人が止めに入った。
「何を言っている。俺達の力をかって頂けるだけでも幸いなのだ。下らない事を言うな」
 と騎士達をぴしゃりと叱り付けたマイクロトフ。騎士達の不満声は消えうせた。同時に傭兵達のざわめきも静まる。
「申し訳ありません。どうぞお気になさらずに」
 言葉を無くしている新同盟軍の面々には、カミューが笑みをもって謝罪の言葉を述べる。これだけ謙虚にされては、同盟軍の他の面々も怒るに怒れない様子だ。だがその一方で、誇り高き騎士団の頂点に立つ二人として、この態度は謙虚過ぎるように映っているらしい。騎士達は聞こえない不満を口内で噛み潰していた。
(なるほど。こういうコンビか)
 と納得すると同時に二人の腐れ縁は、騎士団と上手くやっていくにはこの団長達に良くする事なのだと、学んだのである。
 なにはともあれ、まずは友好を深めようと彼なりに考えたビクトールは「いつも」のように白い歯を見せる豪快な笑顔と共に自分と身長の変わらないマイクロトフの肩をこれまた豪快に叩いた。
「……」
 途端、事に若い騎士達の目つきが厳しくなったのを、フリックは見た。「団長に馴れ馴れしい態度を」と憤慨しているのだろう。ビクトールは知る由も無い。
「とりあえず、城内の構造やらを知っておいた方が良いだろう?好きに歩いてもらっても構わないが、折角だから俺ら案内しようか、騎士団長殿。上手い酒がどこで飲めるとか、上手いレストランメニューについてとかもな」
「ありがとうございます。是非」
 マイクロトフが嬉しそうに微笑む。控えめな笑みだが、元来、喜怒哀楽でいえば「喜楽」の表情が少ないたちなのだろうから、これは彼にしては「満面の笑み」と言って良かった。
「それから、どうぞ皆さん、俺の事はマイクロトフとお呼び下さい」
「私のことは、カミューと」
「お、そっか?俺らのことも普通に呼んでくれよ。そのほうが気楽だしな。年が近い奴も多いし」
 話しの流れの中で自然に出た両団長からの提案。人見知りを知らないビクトールはこの言葉で既に、昔からの友人同士のような感になっている。騎士といえば頑固に堅固との言葉が付きまとっていたが、思った以上に柔軟な反応を返す両騎士団長に、ビクトールは警戒心を解いていた。
「……それはやめておいた方が…」
 だがこれがまた問題を引き起こす。
 フリックの呟きは、的中した。
「何を仰いますかカミュー様!マイクロトフ様!」
 騎士の一人が声を上げる。
「恐れながら、騎士団長とあろうお方をお呼びするのに敬称略とはあまりに無礼ではありませんか!」
 彼の言葉は騎士達の心情を代弁しているのだろう。誰もそれを否定しない。
「え、いや、そんな難しく考えなくてもな……」
 微動だにしない強い視線を向けてくる騎士達に、フリックはまた胃の痛みを覚え始めていた。
 講堂がざわめき立ち、それは次第に爆発的な喧騒へと変わる。
「さっきから聞いていれば!だから騎士なんて迎えるのは反対だったんだ!!」
「何だと!我らを愚弄するか!」
「お高く止まって周りを見下しやがって」
「違う!お門違いな卑下は見苦しいぞ!」
 若い騎士達と傭兵達の罵り合いが飛び交う。
 壇上では盟主リューとナナミが困り果てて言葉を無くし、軍師シュウは知った事ではないとばかりに状況を無視。ちなみにその隣でアップルがオロオロと右往左往。

「うるせーー!!」
「静まれ!!」

 広い講堂の空気が揺れた。
 同時に二人分の声が鼓膜を突き破るほどに響き渡る。
 講堂内は瞬時に沈静化した。
 皆、声の主二人を振り返った姿勢で凝固する。
「………」
「………」
 声の主、ビクトールとマイクロトフはお互いがお互いの声に顔を見合わせた。
「先に、よろしいでしょうか」
「え?あ、ああ」
 ビクトールに断りを入れてマイクロトフは騎士達に向き合う。その表情には明かな「怒り」が宿っている。乱した隊列を寸時に整えた騎士達は、その後に続くであろう怒声を覚悟した。
「馬鹿者!!!」
 そして予想通り、更に鋭い一喝が飛ぶ。
「俺達はこの場において所謂新参者。新しい地においてはその新しい慣習と思想を学び先人を敬う!その心を忘れて如何とするか!!」
 その隣に立つカミューも、端正な面持ちを神妙そうに目伏せ、じっとマイクロトフの言葉を聞いていた。まるで主人に見捨てられた子犬のように目を伏せる騎士や、それでもやはり納得いかないとばかりに真直ぐにマイクロトフを見つめる騎士と、反応は様々だが、いずれも口を噤みマイクロトフの意に従った。
 場が沈静する。
 そこに柔らかなカミューの声が横切った。
「気持ちは嬉しいよ、ありがとう。マイクロトフもそれは同じなんだ」
「カミュー!」
 甘やかすなとマイクロトフがカミューを睨視するが、会って間も無いフリックらにさえカミューの言葉が正しい事を知る。嘘をつけない青騎士団長の性格が、照れて素直になれない様子を露見させていた。
 叱責され緊張が走った騎士達の面々が、両者のやりとりにより緩和する。
(上手い組み合わせの団長達だな…)
 ほっと胸を撫で下ろすフリック。両団長の性格相違はまるで凹と凸のそれそのものだ。隙間無く組み合わさった凹と凸が逆に調和を生み出す。
「だけれど、マイクロトフの言う事は至極もっともだと思うよ」
「カミュー様…」
 両団長の意見が合致してしまえば、平騎士が何を反論できようか。完全に騎士団側の喧騒は鎮火した。
「失礼致しました。では、ビクトール殿、どうぞ」
「え」
 半ば唖然としつつも様子を見守っていたところに突如カミューに話を振られてビクトールの脳裏は一瞬、真白になる。
「まあ、その、なんだ」
 すかさずフリックがフォローに入った。
 騎士と騎士団長らのやりとりを眺めていた同盟軍兵の面々に向かい合う。
「確かに、俺達と騎士さん方とは感覚や考え方が違う。そりゃ当たり前だ。だけど、目指しているものは同じだ。だからこそ、こうしてあらゆるものを捨て、同盟軍に加盟してきてくれた」
「だろ?」と誰にでもなく語りかけると、傭兵たちは渋々眼を伏せるようにして頷く。
「リュー、お前の意見を聞かせてくれよ」
「う、うん」
 フリックは壇上のリューに視線を送る。喧騒が鎮火した同盟軍、騎士達の視線が一気にそこに向いた。その迫力に一瞬気圧されながらも、リューは姿勢を正し、目の前に居並ぶ者々に凛と言葉を向ける。
「僕も、フリックさんや騎士団長さん達の言う事は正しいと思います。でもどちらにしろ僕は、皆さんが仲良く、力をあわせて助け合ってくれる事が一番大事だと思っています」
 年相応の飾りの全くない単純明快な言葉だ。だが、最も大切な事。
 リューの言葉を聞く両騎士団長を、フリックがふと見やる。
 マイクロトフは真っ直ぐと壇上を見つめ、カミューは両目を閉じて言葉に聞き入る。彼らはこの盟主リューが掲げる理想の元に馳せ参じ、そして多くの部下達は己の上官が信じるものの為にその剣を捧げている。
 旗の色が変わろうとも、騎士はやはりどこまでも誇り高いのだと、感じざるを得ない。
「そういうことだ」
 リューの言葉が一区切りつくのと同時に、今までだんまりを決め込んでいたシュウが前方に歩み出た。
「盟主殿がこう仰られているのだ。一つの理想の元に異なる思想が集まれば衝突が起こるのは致し方の無い事。時間をかけて分かり合えば良い。だがひとたび戦いの時となればそのような暇はないぞ。その前に、相互努力を願う」
 以上だ。
 そう言い残すとシュウは戸惑うアップルと共に講堂から足早に姿を消してしまった。
 そうしてその場は一旦、収束したのである。

 だが何度も言うように、
 世の中はそう単純ではないのだった。
 それは軍隊も然り。





 騎士団が加盟して最初の要職会議が開かれた。
 リュー、ナナミを初め、軍師組からはシュウ、アップル、リドリーら。そして実戦指揮官組からはフリック、ビクトールら傭兵部隊要員ら、そしてカミュー、マイクロトフら騎士団の要員らが初めて、加わった。

「元マチルダ騎士団赤騎士団団長、カミューと申します」
 会議の席、改めて自己紹介が行われる。
「元マチルダ騎士団青騎士団団長、マイクロトフと申します」
 両騎士団長に続き、副長、部隊長が名乗る。
 続いて議会は、同盟軍内における騎士団の如何についての詳細が話し合われた。最も、「元マチルダ」という呼称を取り除く事を除いてほとんどは移籍する以前の軍隊構造などに変更はなされなかったのだが。
 元マチルダ騎士団は本日より、「新同盟軍騎士団」と呼称が変わった。
「名乗りを上げる時には間違えないようにしないとな、マイク」
「そうだな…。特に俺は気をつけなければ」
 会議のさなか、ぽつりと呟かれた両騎士団長のそんな私語に場が笑いに沸いたのは、後の笑い話の一つである。

 会議も終盤にさしかかる。
 最後にシュウから両騎士団長にこんな言葉が向けられた。
「基本的な事は以上だが、軍事のプロフェッショナルとしてお二方には是非、ご意見などを遠慮せずに提案して欲しい。強い軍隊、組織を作り上げるのは、軍略とはまた別の次元なのでね」
「承知」
 短い了承の言葉と共に、会議は締めくくられた。

 それから数日間。
 騎士団は組織の再整理、身辺整理に労力を注ぐ多忙な日々となった。故に在籍同盟軍兵や傭兵達と衝突を起こしている暇もなかったのだろう。実に平和な日々が続いた。
 当然、日々の生活の中で騎士達と傭兵達が顔を合わせぬ事などありえない。だが盟主を初めフリックや団長らの言葉が歯止めを利かせていたと言えて誰もが、妥協を示して衝突にまでは至らずに済んだ。
「お前もあれ以上胃をいためずにすみそうで良かったじゃねぇか」
 そんなある日の午後。
 食堂内で軽い昼食をとっていた腐れ縁の二人。
 お冷の中に浮かぶ氷を噛み砕きながら何気なく言ったビクトールの言葉に、フリックは冴えない顔色でため息をついた。
「それがそうでもないんだ…」
「何が」
 鈍いお前が羨ましいよ、とフリックはフォークでソーセージを勢いよく突き刺した。
「お前、気がついてたか?騎士さん方が陽も上りきらない早朝から裏庭で訓練してるの」
「ああ、そんな話は聞いた事があったが。活発な事だなぁ」
 ビクトールは素直に感心している。
 世の中が全てこの男と同じだったら戦争など起こらないのに、とフリックは心底彼が羨ましくなった。
「それを良く思わん連中が多いんだ。だから困ってるんだよ俺は」
「良く思わんって…、なんでだ。まさか朝から五月蝿い、とかでしゃばりだとか、そんな下らない事言ってるんじゃないだろうな」
 珍しくビクトールの推測は当たっていた。
 鶏が鳴かぬ内から裏庭から木霊する騎士達の血気盛んな声や模擬刀がぶつかり合う音は、裏庭に接する城棟にて生活する者にとっては堪らない。音を遮断する構造の訓練場も備えているのだが、さすがにまだ新参者とあって遠慮しているのだろう。
「それに…、さすがに焦るんだろうな」
 傭兵達の心情を推測してフリックはため息をつく。フォークはソーセージを突き刺したまま先に動かない。
「焦る?」
「今まで理想と夢を追いかける勢いだけでここまで突っ走ってきた連中ばかりだから…、いざ騎士団のようないわゆる完成された『プロ』集団が現れた事で、何かを奪われてしまうような気がしているんだろう」
「………」
「騎士団の連中は、いわゆる『エリート』集団だ。伝統と教養を重んじるだけあって、どいつもキレる。しかも個々人の戦闘能力も高い。そしてあの組織力。誇り高く意識も高く、理想も高い」
「できすぎだな。おとぎ話みてぇだ」
「それが現実に、しかも目の前に現れたんだぜ?」
 ミューズの攻防戦あたりから、うすうすと感じ始めてはいた。
 夢と理想だけでは立ち向かう事のできない現実の壁。それがすぐ傍まで立ちはだかろうとしていた事を。
 そんな中に、あの騎士団が現れた。
 彼らが壁を破壊してくれる。
 単に軍事力増大の意味だけではない、騎士団の価値。
 シュウはそれを期待しているのだろう。
「お、噂をすれば」
 レストランの入り口から、会話の主役であった鮮やかな赤と青の人影が姿を見せた。レストランにいた人間達の誰もが、ちらりとその方を一瞥したのが雰囲気で感じられる。やはり新参者という事の珍しさもあいまって何かと話題の中に登場する彼らだ。
「よーう、カミューにマイクロトフ!」
 豪快に手を振ってビクトールが呼びかけると、二人は軽い会釈と共に二人のいるテーブルに歩み寄った。
「今からメシか?一緒にどうだ」
「ええ。相席させて戴いて、よろしいのですか?」
 心なしか疲れた様子のフリックに気がついていたカミューが、遠慮めいた言葉で問い掛ける。
「勿論。どうぞ」
 気を取り直して笑みをみせ、フリックも空いた席を指し示した。
「では、失礼します」とフリックの隣にマイクロトフ。ビクトールの隣にカミューが腰掛けた。珍しい組み合わせのテーブルに、ウェイトレスの少女も興味深げな視線と共にメニューを差し出した。
 メニューを広げたカミューが目元を明るくした。
「肉料理が随分と豊富だよ、マイク。良かったな」
 少し遅れてメニューを開いたマイクロトフも、ざっと眼を通したそこに好きな料理が揃っていたとみて満足そうに「そうだな」と笑った。
「マイクロトフは肉が好きか。俺もだ。特に牛だな」
 果実水が入ったグラスをマイクロトフの方に掲げたビクトールに、マイクロトフも水の入ったグラスで応えた。
「牛は俺も好きです」
「ここの肉はな、ユズっていう酪農の天才少女が仕入れてくる絶品ばかりだぜ。ユズが造る乳製品もこれまた美味いんだ」
「酪農責任者が、少女なのですか?それは凄い」
「ああ。仲良くなっといた方がいいぜ~?安値で美味いところを譲ってくれるかもしれないぜ」
 そこで両者が同時に笑った。豪胆なビクトールに堅物なマイクロトフだが、中々気が合う様である。フリックのはす向かいに座るカミューが、ビクトールと共に楽しそうに笑うマイクロトフを安堵した面持ちで眺めていた。
「昼食が終わったら、またすぐに仕事かい?」
 フリックがカミューに話かける。
「ここんところ、ずっと慌しそうだったよな」
「ええ。でもそろそろ、整理がついてきたんですよ」
 上品な笑みをたたえてカミューも応えた。
 彼は誰に対してもこのように礼儀正しい笑みを向ける。それは言い換えれば、誰に対しても心を開いていないようにもとらえられる。ただ一人、向かいに座っている親友を除いて。
「今日の午後は、訓練場の見学をしようかと思いまして」
「訓練場?」
「ええ」
 とだけカミューは短く応えたのを、フリックはその時さほど気にはとめなかった。
「お、それなら案内するぜ。城ん中案内するって言いながら、まだしてなかったよな。悪ぃ」
「そうですか?ではお願いします」
 そうしているうちに料理が運ばれてきた。
 食事を進める間も、それぞれ年齢も近いとあり腐れ縁と両騎士団長の間に会話が止まる事はなかった。


 両騎士団長を伴ってビクトールとフリックが訓練場にやってくると、そこにすでに数人の騎士達が団長らの到着を待っていた。
「お待ちしておりました」
「お疲れ様です」
 皆が一斉に臣下の敬礼を示す中、カミューとマイクロトフは「ああ、ご苦労」と短く応える。
「お疲れ様でございます、フリック様、ビクトール様」
「え?あ、ああ、どうも」
「お、おう。お疲れっす」
 若い騎士に敬礼され、しかも『様』付けと臣下の礼をとられてフリックもビクトールも一瞬、立ち怯んだ。先日の会議により正式に騎士団が同盟軍としてシュウの手により調印登録が行われ、それを境に騎士達の態度もその軍則と階級に沿ったものに変わったのである。直属の上官でないとはいえ、若い平騎士達にとってフリックやビクトールは傭兵部隊を取り仕切るいわゆる「将軍」。臣下の礼は当然と心得ているのだ。
 傭兵部隊時代、特に階級に拘る慣習がなかったフリックらにとってそれは少々驚きだった。
「それでは始めるか」
「はい」
 訓練場の全体を一通り眺めたマイクロトフの合図に、筆記具を手に控えていた部下達が動き出す。
「始めるって、何を…?」
 とフリック。
 訓練場では鍛錬を行っている傭兵や兵士らの人影がまばらに点在している。そんな彼らも、騎士達の登場に剣を振るう手を止めてこちらを眺めていた。
「見学というより…、リュー殿とシュウ殿にご許可を戴き本日は訓練場の『視察』に参りました」
「視察?」
 今度はビクトール。
「はい。訓練場の規模、構造、備品の確認などを行うのです」
 筆記具と用紙挿を手にしていた青騎士の一人が団長に代わり応える。
「そして必要に応じ改築、増築、備品補充などを行い施設改良を行い、その上で軍全体の教育体制、訓練制度の見直しを行い再提案致します」
「教育体制の見直し?」
 長い戦争生活の中で一度も耳にした事のないような事柄の連続に、ビクトールは軽い頭痛を覚えた。「ええ」と今度はカミューが続きを答える。
「はい。我々の責務は、この新同盟軍の軍事力増強です。長期的視点からも即戦的視点からも、この軍の訓練制度の改良を行う必要があると判断しました。基盤が強く打たれ強い軍隊の生成には、一にもニにも『教育』です」
 暗記したように一度のどもりもなく整然と言いきった若い騎士の言葉にビクトールは「うーん」と曖昧な相槌を返す他ない。
「………」
 至極もっともな事ばかりだが、どうもまるで「ここの兵達は教育がなっていない」と暗に言われているようでフリックは表情を曇らせた。訓練場に見える傭兵達の面持ちも、苦虫を噛み潰したようなそれに変わりつつある。
「さきほどリュー殿にもお話しした事なのですが…」
 と再びマイクロトフ。訓練場全体を見渡すように視線を外側に巡らせた。黒い瞳が訓練場を一巡して再びフリックとビクトールに戻る。厳しいほどに真摯な視線だった。
 そして次の彼の言葉で、場は沸騰する事になる。

「ここの兵は、錬度が低い」

 凛と、涼然とそう言い放ったマイクロトフの表情は微塵も動かなかった。隣に立つカミューも、両手を悠然と胸の前で組んだ姿勢でマイクロトフの言葉を無言で肯定していた。背後に控える騎士達も、同じ。
「ですが…」
「何だと貴様!!」
 言葉を続けかけたマイクロトフを遮り、訓練場の奥から複数の怒声が響いてきた。フリックも顔を知る古い傭兵仲間数人がマイクロトフに詰め寄った。止めようと動きかけた騎士達を、マイクロトフは手を軽く振って退ける。カミューにも、特に慌てた様子は見られなかった。
「おい、やめとけよ」
 撒き散らすような怒りを露にする傭兵達と対照的に表情も変えずにそれを迎えるマイクロトフ。
 みかねてフリックが手を差し伸べかけた。
「フリックさん!あんた、悔しくないんですか!?」
「言いたい放題言いやがって!謙虚にしてたかと思えば化けの皮が剥がれたな!」
 怒号騒ぎをききつけ、訓練場には徐々に人が集まりだした。
「そうだ!やっちまえ!」
「エリート然としやがって!」
 増える野次に背中を押されるように、マイクロトフに詰め寄る傭兵らは更に興奮したように罵声を向ける。
「騎士連中の訓練みたいな事で戦に勝てるか!」
「俺達はいつも死線で鍛えてきてるんだ!」
「お上品に剣を振ってるだけのお前らなんぞ…」
 一人がついに拳を振り上げる。
「おい!やめろ!」
 ビクトールが声を上げる。
 振り上げられた拳には、紋章が宿っているのを知っていたからだ。
 赤い発光。
 炎の紋章が、マイクロトフの間近で発動した。
「何やってんだ!逃げ…」
 フリックらの視界の中、だが両騎士団長は身じろぎしない。
「喰らえ!」
 紋章を振り翳した男が不敵に笑う。周辺の空気が一気に熱した。
 その時、

「守りの天蓋!」
 
 声が上がった。
 若い騎士の一人がマイクロトフの前に立ちふさがる。
 手に宿した紋章を前方に翳し、呪言を叫ぶ。
「…っ!」
 炎の紋章から生み出された炎の帯は、
 騎士が生み出した防御壁に阻まれ拡散した。
 すさまじい霧状の煙が瞬時に辺りを飲み込み、そして炎はそのまま、消滅した。
「くっ…」
「ごほっ」
 男は舌打を漏らし、訓練場の面々はあまりの煙たさに咳き込む。
 煙が徐々に、退いて行く。
「おい、大丈夫か…」
 フリックの目の前からも、煙が幕を引くように退いて行く。
 そこには、
 相変わらず直立不動で前方を見据えるマイクロトフと、腕を組んだ姿勢のまま悠然たるカミューと、そして両騎士団長を守るべく傭兵の前に立ちふさがった若い騎士の姿。
 よく見れば、まだ十代の新米と言って良いほどの若い騎士だった。
 魔法を発動し終えた右手で今度は剣を抜き、傭兵らに向けて構えた。
「マイクロトフ様とカミュー様に挑もうなど、身のほどを知れ!青騎士団騎馬隊第十隊所属、レブラントがお相手する!」
 声変わりしきっていない、まだ幼ささえ感じられる『少年』とも言える騎士だ。だが剣の構えに隙はなく、かつ先ほどは咄嗟にも関わらず紋章魔法も使いこなしていた。
(こんな、若い下級騎士でさえ………)
 フリックは息を呑んだ。
 同様に、訓練場は沈着する。
「お言葉ですが…」
 緩やかなカミューの声が、やけに鋭く響く。
「貴殿ではレブラントに勝てませんよ。貴殿だけではない。この軍にいる傭兵、兵の半数近くは難しいかもしれませんね」
「………」
 徹底的に突き放したカミューの言葉は、穏やかな声調と裏腹にどこまでも冷たい。
 もはや野次は飛ばなかった。
 下級騎士でさえこの実力。であるとすれば、その後ろに控える上級騎士や、ましてや騎士団長らの実力は如何程なのか…。
 想像がつかなかった。
「もういい。ありがとう」
 レブラントと名乗った若い騎士の肩に手を置いて、マイクロトフが下がるように命じる。静かに剣を収めてレブラントは恭しく会釈をすると、また元いた位置へと戻った。
「これでお分かりだろう」
 成すすべなく呆然とする傭兵達、訓練場にいる全ての人間に向けて、マイクロトフは言葉を向けた。
「戦争は、理想だけでは勝てない」
 彼の声はよく通る。
 ビクトールは先のミューズ攻防戦を思い浮かべていた。
 雑然たる戦場の中、喧騒と怒号が飛び交う中で、丘の上から発せられた彼の名乗りはどこまでも響き渡った。よく通る。それだけではない。有無を言わせぬ強さ、従わざるを得ない強さがあった。
「心技体が揃ってこそ守れるものがあり、成しえる未来もある。ここの軍に宿る『心』は申し分無い。正しき心があり、理想がある。そして士気も高い。我々は、この新同盟軍に宿る『心』を学んだ。ここに技と体が完成される事で新同盟軍は如何なる妨げにも屈せぬ最強の軍となろう」

 それは演説ではない。
 まるで、

「我々が軍に補い伝える『技』と『体』がそれを可能にすると自負する」

 勝鬨。

「新同盟軍は必ずや最強の軍となる」





 盟主リューに申し出たマイクロトフの言葉。
 
『ここの兵は練度は低いですが、士気は高いですね』



 それをフリックとビクトールは後に知るのである。







 夜更け、人気の少ない酒場。
 フリックとビクトールは、二人で使うには広すぎるテーブルを挟んで酒を酌み交わしている。二つのグラスと、瓶が一本。つまみは無い。
「俺には逆立ちしてもいえないセリフだな…」
「さっきのマイクロトフ達のセリフか」
「笑われるのがオチってとこだな」
「俺もだな」
 訓練での出来事を思い出し、二人はお互いを苦笑する。
 騎士達は勿論、傭兵や同盟軍兵までがマイクロトフの弁に反論を失い引き込まれていた。ただ黙っていただけのカミューにでさえ、一種の圧倒的畏怖を覚えていた。結局あの後、傭兵達は黙って訓練場を後にし、野次馬達もフリックたちにより退散。騎士達は予定通り『視察』を行った。

「奴らが敵じゃなくて良かったよ」
「まったくだぜ」
 
 長い長いため息。
 会話が途切れた。
 カウンターの奥でこの店の主人がグラスを拭いている音が、異国の楽器が奏でる歌のように流れてくる。
 今日の女主人は、気を利かせて先ほどから姿を見せない。
 この気の付き方が、彼らにはとても心地よかった。
「今日あの時あの場所で、また一つ固い大きな何かが破壊された。そんな感じだ」
 琥珀色の液体を一気に喉に流し込んだビクトールが良い気分に頬を染まらせている。酔い始めだが、声と瞳は力強かった。
「どうなる事かと思ったけれど、俺もそう思う」
 控えめにグラスに口をつけたフリックも、頷く。
「新しい物を作るためには、まず古いものを壊さなくちゃいけない。あの達騎士団は、この同盟軍にとってそうしたものをぶち壊していく『破壊者』なんだよな」
 シュウの狙いが見事に効を成す結果となりそうだ。
 また鼻先で「そら見たことか」とせせら笑われるのは面白くないが。
「明日からどうなると思う?」
「もう喧嘩は起こらないでくれる事を祈るな。胃がもたねぇ」
「じゃあこの酒はお預けだ」
 ビクトールの手がフリックからグラスを取り上げ、まだ残っていた酒を飲み干してしまった。
「あ、おい!」
 瓶の中は残り僅か。
「高い酒なんだ。そんな飲み方があるかバカ!」
「ケチケチすんな」

 その夜酒場は、夜明け近くまで明かりが消えなかったという。



 そして数日後、両騎士団長を中心として作成された『訓練制度改定案』が軍議上で発表された、全面的に採用される事となる。
 訓練場は増設され、備品も補充された。
 訓練カリキュラムが制定され、給料制度も努力と実力と戦果に見合わせた体系に改定された。

 そして徐々に、騎士団の訓練に混じる傭兵らの姿が増え、

 傭兵らの実戦訓練に混じる騎士の姿も見られるようになり、


 新同盟軍はまた一歩、新たな創造を成し遂げたのである。









破壊者  完
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2006.04.25.Tue/19:46

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北野ふゆ子

Author:北野ふゆ子
> 昔は、ゲームやマンガの二次創作をしておりました。現在は主にオリジナルネット小説を執筆しています。 得意は「シリアス」「アクション」「サスペンス」です。

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